似たような感じの動きだと気付いたときから「できそうな気がする」
器械運動系のうち、鉄棒や固定施設に比べるとマットと跳び箱は休み時間などに挑戦できにくい運動なので、技能克服がより困難です。
器械運動系の運動内容は、他の教材に置き換えることのできない重要な価値を備えています。できない技ができるようになること自体が楽しい運動なので、その特性を十分に味わえるようにしなければなりません。
3年生以上で学ぶ器械運動の基礎を培うには、2年生までの運動遊びを大切に扱う必要があります。そのため授業の初めに、「似たような感じ」がする運動遊びを取り上げるようにします。非日常的な運動であるため、技を身に付けるためには、「似たような感じ」によって磨かれる感覚が身に付いていないと、簡単そうに見えても難しい運動と捉えられて、「できそうもない」となってしまうからです。
この感覚は、「似たような感じ」がする動き(アナロゴン)を含む運動遊びによって身に付くものです。そのため、「あのとき遊んだ感じと同じようにやれば、できそうな気がする。」と思えることが、技能習得の第一歩となります。跳び箱運動をする前に馬跳びをしたり、積み上げたマットに両手を着いて肩に荷重がかかるようにしてぴょんぴょん跳んだりすることなどが開脚跳びのアナロゴンといえます。
器械運動嫌いを無くすには、学習指導要領に例示された「基本的な技」をすべての子供が身に付けられるようにすることが一番です。器械運動の最大の魅力は、できない技に挑戦してこれを達成することです。しかし、できない技への挑戦のみが強調されてしまうと、「基本的な技」に十分に取り組むことに関心が向かなくなります。
「似たような感じ」の運動遊びで磨かれる体の使い方や感覚を駆使してこそ、技は習得されていきます。3年生以上の器械運動の授業で「似たような感じ」の動きを含む運動遊びをおざなりに扱っては、ならないのです。