丸くなってばかりの「ゆりかご」は、絶対できない

子供のからだマット遊び・マット運動,器械運動系,運動遊び

簡単にコロコロできるので気持ちいい「ゆりかご」をできなくする方法があります。それは、なるべく体を丸めることです。

3・4年生のマット運動で扱う前転は、「しゃがんだ姿勢から手で支えながら腰を上げ、体を丸めて前方に回転」するように平成29年版学習指導要領解説に示されています。解説に示されているこの行い方は、後頭部→背中→尻→足裏の順にマットに接触させていくときに、あごを引いて体を丸めればボールのようにコロコロと転がりやすくなるという考え方によるものです。

しかし、自分でやってみると分かることですが、しゃがんで手を着いた後、ずっと体を丸く小さくしたままで腰を上げても回転を始めるのは現実的には不可能です。そこに坂道のような傾斜がない限り転がることはできません。膝を伸ばして腰を浮かせるような動作を入れることで、ようやく回転し始めるのです。そのため、この行い方をそのまんま額面通りに知識として備え、前転を試みようとしても、きちんとやろうとすればするほど転がれないことになります。

前転に似たような感じを含む動き「ゆりかご」では、両腕で膝を抱えるようにしてなるべく胸に近付け、あごを引いて丸く小さくなっていても、ず~っと丸くなっているわけではありません。揺り戻すときに膝と胸の間がクイッと広がる瞬間が誰にも必ずあります。この瞬間にこそ回転力が生み出せることに「ゆりかご」で遊びながら気付くようにしたいところです。この広がった角度は、起きるときまでには再び狭まってくるので、丸く小さくする姿勢が最初からずっと続いていたように子供が錯覚しているだけです。

3年生以上の器械運動で取り上げる「ゆりかご」では、揺り戻すときに片方の膝を伸ばしてみたり、首倒立のような動きを入れて最後に膝を戻してみたりするなどの条件を加えて行うこともできます。そうすることで、自分で回転力を生み出せる動きの感じの経験が積み重ねられ、その後に出会う技に対しても「自分で回転力を付けるには、こうするんだ。」と応用することができます。いつまでも「背中を丸めましょう。」ばかりで「ゆりかご」を指導していると、体の使い方による回転力を感じることができません。そればかりか転がるときに膝を伸ばすような動きの感じもつかめず、発展技である大きな前転や開脚前転に挑戦しても膝を伸ばしきれない動きになってしまいます。

ぜひ、膝をギューッとしっかり抱え込んだなるべく丸くなったままの「ゆりかご」にチャレンジしてみてください。絶対、できないですよ。

ヒントは、週2回(月・金)アップロードされます。(令和4年4月1日現在)

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