どこまで教えたら気が済むの?
ハードル走にかんする次の例示が何年生に示されているものか考えてみましょう。
① 遠くから踏み切り、勢いよくハードルを走り越すこと。
② 抜き脚の膝を折りたたんで前に運ぶなどの動作でハードルを越すこと。
③ スタートから最後まで、体のバランスをとりながら真っ直ぐ走ること。
④ 振り上げ脚をまっすぐに振り上げ、ハードルを低く走り越すこと。
⑤ インターバルでは、3または5歩のリズムを最後のハードルまで維持して走ること。
どの例示も、ハードル走を学ぶ子供たちに指導したいと思えるようなポイントばかりですね。実は、小学校5・6年生での例示は③のみで、①と②は中学校1・2年生、④と⑤は中学校3年生です。
運動領域の教科書がないためか、技能をどう指導していいか分からないという声がよく聴かれます。
器械運動や陸上運動、水泳などは技能の具体的な形が明確です。開脚前転は形としてはっきりイメージできますし、ハードル走の走り方やクロールの泳ぎ方など、その動きの形や技能ポイントも分かっています。
そのため、「なるべく大人のパフォーマンスに近い指導を早い段階からしておいた方が、いいんじゃないか」という誤った認識ができあがってしまいます。本来は、示された目標を身に付けることができるようにするための指導であるべきが、大人のスポーツっぽくなってしまうのです。
指導者は、これらの技能ポイントを知っているので子供にいろいろ提示したくなります。しかし、そこは一歩踏みとどまって、ハードル走の目標にある「リズミカルに走り越えること」が達成できるために「どのように走り越えたらいいか」を子供自身が設定し、自己の課題に気付いていけるように指導していきます。