その名は「跳び箱調節器」

マネジメント・直接的指導,子供の学び器械運動系,学習課題,技能,環境,跳び箱遊び・跳び箱運動

体育館の倉庫の隅に木製の大きな“直方体”を見たことは、ありませんか? 何に使うのでしょう?

平成29年版の学習指導要領解説では、跳び箱運動の基本的の技である開脚跳びの技能として、「助走から両足で踏み切り、足を左右に開いて着手し、跳び越えて着地する」とあります。この技の説明にある2つの「読点(、)」の部分は、体が宙に浮いている状況にあります。

「最初の読点」の部分は、踏み切った後に着手するまでの間の一時的に体が浮いた状態を表しています。

また、「次の読点」の部分は、着手の後に着地するまで、やはり体が浮いている状態になっていることを表しています。

つまり、跳び箱運動の開脚跳びでは、踏み切りから着地までの間に着手という動きを挟んで体が浮いている2つの局面があることになります。これらについて、「最初の読点」にあたる局面を第一空間、「次の読点」にあたる局面を第二空間と呼ぶことがあります。

基本的な技である「開脚跳び」を身に付けた子供は、自分の能力に合った次の技として「安定した開脚跳び」や発展技である「かかえ込み跳び」を選択して学習を進めていきます。

平成20年版の学習指導要領までは、「安定した開脚跳び」と並んで「大きな開脚跳び」も発展技として例示されており、選択肢の一つでした。この「大きな開脚跳び」のような動きを実現するために第一空間が大きくなるように発明された教具が、冒頭の“直方体”です。

踏切板と跳び箱と間にいくつか置くことで、踏み切りから着手までの距離を保ち、第一局面が大きくなるような環境に調節するための“直方体”で、その名も「調節器」です。「調節器」を入れないと、踏切板がずれたり、踏切板を踏み外したりしてしまいます。

発展技の「かかえこみ跳び」の場合も、「調節器」は大活躍するはずですが、使われている様子が見られない授業があります。

指導者が「『かかえこみ跳び』は発展技で難しいから、『調節器』は無しの方がいいだろう」と勝手に決めているからでしょうか。踏み切りと着手の位置がある程度遠くない環境が、基本的な技である「開脚跳び」を身に付けてきた子供にとっては、むしろやりにくいとも知らずに?

ヒントは、週2回(月・金)アップロードされます。(令和4年4月1日現在)

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