表現運動系の「技能」とは、何か

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「表現運動系の技能の指導が難しい」という声は、よく聞かれます。「どのように指導したらよいか分からない」ので、運動会の表現種目だけで済ませてしまう場合もあるかもしれません。

表現運動系は、器械運動系や陸上運動系、ボール運動系などほかの運動領域のように、具体的な技や技能の系統性に沿って段階的に習得していくのではなく、子供一人一人の多様な表現を認めて広げられるようにしていくところに技能の特徴があります。

29年版学習指導要領に示される各運動領域の知識及び技能の内容を見ても、例えば3・4年生の場合、「次の運動の楽しさや喜びに触れ、その行い方を知るとともに」までは、どの運動領域でも同じです。この後に続くのが、「その技を身に付ける」「その動きを身に付ける」「易しいゲームをする」など各運動領域では具体的な技能が前面に出てきますが、表現運動では「表したい感じを表現したり…」というように表現運動の運動特性に関連する技能が示されているだけです。

このように表現運動系は、器械運動系が主に克服的、陸上運動系が主に達成的・競争的、ボール運動が競争的であるような、「できる・できない」「勝った・負けた」という運動特性が薄いため、技能が明確に見えにくいと言えます。それでも表現運動系にも当然、技能があり、子供一人一人がイメージする動きの広がりの中に「よい動き」としてのポイントも存在します。

表現運動系の技能とは、「動きの面白さ」がイコール「よい動き」を示していると考えることができます。ここで言う「動きの面白さ」とは、1・2年生では、イメージにふさわしい動きを見付けて全身を使って踊ることだったり、3・4年生では、動きを誇張したり変化を付けたりして踊ることだったりします。したがって「よい動き」と考えられる条件は、イメージにふさわしい動きを、全身で、それこそ視線も含めて表情豊かに、題材になりきって踊っている学習状況と言えるでしょう。

「動きの面白さ」を感知することが、表現運動系の指導を難しくしているとも言えますが、子供たちが即興的に踊った動きが「よい動き」になるように即座に助言していくことも指導者には必要となります。子供のイメージした多様な表現を認めつつ、その「動きの面白さ」に共感して見取りを行わないことには、子供の学びにはつながっていきません。

ヒントは、週2回(月・金)アップロードされます。(令和4年4月1日現在)

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