「コツ」は、「ポイント」のように知識として定着するものなのか?
「コツ」とは、その動き方の要となることを身体が了解することです。
つまり、「コツ」は、もともと稚拙でありながら誰もが持っていた暗黙知であると言えます。その「コツを磨く」作業のことを、「コツをつかむ」とか「コツが身に付く」と言っているにすぎません。
「コツ」をつかむことは、個人のもつ運動感覚能力に支えられており、その能力が総動員されて、それらが統合されることによって初めて姿を現すものです。また、「コツ」が身に付く状況とは、自分がやりたいと思っている運動をしているとき、体の動かし方の要領、力の入れ方やタイミングの取り方などを自分の体でつかみ、「分かった!」と了解したときのことです。
しかし、いくら技能ポイントを図に示して頭で理解させようしても、「コツ」は、子供自身が自分の体を実際に動かすことでしか覚えることができません。
ポイントと違って「コツ」は、「知識」として学習できないので、自分が運動する以外に獲得できる道はありません。自転車に乗るポイントは、「サドルに座ってハンドルを握って左右のバランスを取りながら両足でペダルをこぐ」と理解しても、乗ってみないことには「コツ」はつかめないのです。
「コツ」を身に付けることで、運動の負担免除の原理が働きます。負担免除とは、動くためのポイントを意識したり、動くことに特別な努力を必要としたりする負担から開放され、その場の状況に応じて自由に動くことができることをいいます。余計な力が入らなくなったり、ぎこちなさが消えたりするのは「コツ」をつかんだからです。
自転車の乗り方の「コツ」は、知識ではないため忘れることがなく、数十年ぶりの自転車でも乗れます。その後は、年齢を重ねてくると身体が思うようについていかなくなるので次第に乗れる自信がなくなっていきます。