本物のラグビーを見て「遊び」に置き換えられる資質・能力
休み時間にラグビーボールを自由に使っていいきまりにしておくと、さっそく自分たちのゲーム作りに取り掛かります。しかし、その様相をよく観察してみると、子供の発達的特性に応じてゲームの作りに特徴がみられます。
1・2年生の場合は、とにかく自分がボールを持っていることが面白いので、それを競い合うことが運動の特性として表面化します。4人でボールが2つ存在するというように互いにボールをJACKALし合うゲームとなります。
そこには、チームの存在はなく、ボールを所持している個人がその時点で勝ちという規則です。ボールを相手から奪うと、すぐさまその場所から離れるためにRUNしますが、ゴールも無いので、点数も関係ありません。JACKALしたあとあまり遠くまでRUNしてしまうと誰からも狙われることがなくなってつまらないので、適当な所まで逃げて行っては、再びボールの奪い合いが始まります。
3・4年生ともなると、チームとしてのまとまりができてくるのが特徴です。RUNによって相手をかわしてTRYまでもっていこうとします。1・2年生のゲームとは全く違った様相を呈します。しかし、この年齢の子供は、ディフェンスもそれなりに上手なので、簡単に捕まってしまいます。
後ろにしかPASSできない規則を自 分たちで導入しているのですが、PASSの技能とポジション取りが不十分な自己認識があるため、PASSはほとんど使いません。これが、彼らにとっての運動の特性です。
そこで選んだ作戦は、ボールをもっている友達を仲間が囲んでそのままゴールにめがけて押し込んでいくモール作戦です。この間にくるっと体が回転して抜け出せれば、ゴールは目の前です。仲間とワイワイすること自体を面白がって楽しんでいるようです。
5・6年生になると、校庭を縦に使って大きな展開のゲームをしようと試みるようになります。RUNのテクニックもある程度ついてきているので、敵に捕まってしまうことがほとんどなくTRYの応酬です。これでは、つまらないので自分たちで規則の工夫が行われます。その一つがLINE-OUTです。
どこまでもRUNして行ってしまうので、見えないサイドラインを勝手に作ってプレーをしていきます。このほか、首が痛くならないように気を付けながらSCRUMにも挑戦していました。
ボール蹴り禁止という休み時間のきまりの中で、自分たちができる範囲で規則を工夫していく様子からは、「遊び」であるがゆえの主体的な状況を見出すことができます。運動の特性のとらえの違いを「学び」として価値付けようとすることは、体育の指導のヒントになります。