時代に取り残される水泳検定

モニタリング・相互作用,学習内容学習指導要領,技能,指導者,水泳運動系,評価

周りを海で囲まれた島国日本にとって「泳ぐ」ことは重要な文化の一つでした。江戸時代に始まる古式泳法や隊列を組んで泳ぐ遠泳などがそれです。戦前の1936年のベルリン・オリンピックで「前畑、ガンバレ!」と実況された前畑秀子さんの金メダル獲得も、「水泳王国、ニッポン」の名を世界にとどろかせました。

学校でも水泳指導が盛んに行われるようになりました。多くの学校で「検定」が導入され、子供たちの目標設定に一役買いました。「25m泳げたら、3級だ!」と、子供たちは張り切ってチャレンジしていました。合格すると帽子に貼るシールや縫い付ける色つきの紐をもらえたりしたので、それらをゲットできることも子供たちは、うれしかったのです。

泳力に応じたこれらのマーキングは、子供の意欲を喚起する目的のほか、指導者にとっても安全に配慮するうえで大きな意味がありました。帽子についているマークでその子供のおよその泳力が把握できることから、特に夏季休業日中の水泳教室において担任以外の指導者にとって必要な情報でもあったのです。顔がよく分からない子供もやって来る夏休みのプールで安全を確保しつつ適切な指導するには、級のマークが欠かせないアイテムとなりました。

しかし、「検定」は技能のみに関する基準を示しているにすぎず、主体的な学びや自ら課題を見付ける学習へと推移した現在、「検定」がもっていた到達目標としての意味は失われました。「25mを泳ぎ切るためにどんな練習をすればいいか」という学びを子供自ら考える時代にそぐわなくなったのです。

ヒントは、週2回(月・金)アップロードされます。(令和4年4月1日現在)

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