動きのカタチを見ても、すぐに「できる」わけではない。
器械運動系の指導で、運動の図形的な認識を手立てとすることがあります。「動きのカタチ」を視覚的に捉えて提示する方法で、学習カードの図解資料などがその例です。
跳び箱を跳ぶときに腕はどこにあるのか、足はどのような軌道を通るのか、腰は肩よりどのくらいあげるのか、膝はどのくらい曲げるのかなど、図解資料には、それぞれの局面での身体の空間的な位置関係と「動きのカタチ」が示されます。子供たちにとって、そこに注意を促せる客観的内容をもつので、指導者からの具体的な支援で技能の改善を図れる可能性があります。
しかし、器械運動系の技は、これだけでは「できる」ようにはなりません。「できる」には、動き全体のリズム、どんな感じで、どんなタイミングで、どんなアクセントでといった、緊張と解緊による構造といった力動的内容が含まれます。
しかし、タイミングやアクセントなどのような感覚的なことは図解されず、客観的に計測したり視覚的に捉えたりもできません。そこで、子供が「動きのリズム」を実感できるようにすることが、教師の指導力として求められます。
「トン・トト・トーン」など一連の流れから動きの特徴を捉えて運動全体がどのようなリズムをもっているか、「グワーン」「パーン」など強調すべきアクセントがどこに置かれているか、「タン・タン・ターン」など動きの時間的長短や特徴的な関係からどの部分をすばやく或いはゆっくり行うのかを、イメージできるようにしていきます。
「動きのカタチ」を頭で理解しようとする大人に対して、「動きのリズム」で動きや技ができるようになってしまうこともあるのが、子供です。