腕をしっかり振ると、なぜ、速く走れるのか
人類と祖先が同じと考えられているゴリラの歩き方を見ていると、右手と右足、左手と左足をそれぞれ同時に出して進む歩き方をしていることがあります。では、ゴリラが走っているときは、どうでしょう?
できるだけ早く目的地に到着したいゴリラの動きは、ヒトのような「走る」動作にはならず、一生懸命右手と右足、左手と左足をそれぞれ同時なような微妙なタイミングで出しているだけです。「タッタッタッタッ」という「走る」でなく「ターンタターンタターンタ…」のような動きです。
一方、人間の方はどうかというと、小さい子供のころから「走る」ような動作をしています。ただし、そのときの「走る」では、腕をしっかり振るというような動作を伴いません。
倒れないようにバランスを取るため、むしろ手は、やじろべえのように伸ばされた状態で、ゆらゆら揺れているだけです。前後にシュッシュッと振ることはありません。
信号が赤になりそうなときに走る人がいます。ところが、腕を大きく振って渡り切ろうとしている人をあまり見かけません。
「腕をしっかり振って走ると速い」ことは、必ずインプットされている知識です。そのため、かけっこや短距離走のように速く走らなければならないとき、人間は足を速く動かすことに加えて腕を大きく速く振るのです。しかし、速く走れることを知っていても交差点でそれをやらないのは、世間体を気にするからでしょう。
そもそも、速く走るときどうして腕を振らなくてはならないのでしょうか?
腕振りの効果を身をもって体験するため腕組みをしたまま走ってみると、速く走れば走ろうとするほど腰のあたりがねじれてうまく走れないことに気付きます。実は、腕を振ることの根拠は、下半身の回転力とのバランスをとるために上半身の回転力を生み出すことにあるのです。しかし、子供の場合「腕が早く振れると、足の動きも早くなり、結果、かけっこが速くなる」ということになります。