「サルは逃げる、ウサギが追う」この鳥獣戯画の世界から学べること
鳥獣戯画には、サルとウサギが追いかけっこをしている場面が登場します。理科の「見方・考え方」を働かせると現実的には、この二者による遊びは考えにくいです。しかし、動物の本能として追いかけっこをしたくなるのは、ウサギやサルだけでなくライオンの子供同士を見ても明白です。
ライオンの子供は、ここで追いかけっこをしっかりやっておかないと、将来、自分が獲物をゲットできなくなるという死活問題につながってしまいます。そのため、一所懸命追いかけっこをして遊ぶように遺伝子がセットされ、それを遊びながら経験しなくてはならないようになっていると考えられます。
追ったり追いかけられたりする動きは、どちらの立場でも、一生懸命走らざるを得ない状況に追い込まれています。しかし、30m走のような走るだけの「かけっこ」よりも速いスピードが出ることがあります。ただ速く走るだけでは逃げ切れないところにポイントがあるからです。
「鬼遊び」では、鬼を見ることなくひたすらまっすぐ走る子、鬼を困らせてやろうと若干ジグザグに走る子など、様々な技能レベルが見られます。鬼を見ながら動きを事前に察知して逃げ出すタイミングを見計らってから走り出す子もいます。動物としての本能を刺激する「鬼遊び」は、休み時間やレクなどで気軽に扱えます。
しかし、リレーやマット運動、リズムダンスなどと違って3年生以降の学習には登場しません。そのため、鬼遊びは1・2年生のときに相手との距離感や空間スペースをつかめるよう十分学習させなければならない極めて重要な、決して気軽に扱えない内容と言えます。ここで経験した空間認識の能力を使えることが、ボールゲームで自分のポジショニングができるかどうかと深く関係してくるからです。