対話的な学びで折り合いをつける
遊びの中でいろいろとルールが変わっていくことは、子供の遊びの中ではごく自然に行われます。やっていておもしろくなかったり、「このままではまずい。」と思ったりしたときにルールを変えるのです。
個人戦でなければたいていの場合2チームに分かれて遊ぶので、双方の合意があればルール改正はいとも簡単に行われます。次に遊ぶときにも改正されたルールは引き継がれるので、スムーズに遊びに入ることができます。
厄介なのは、違うルールで遊んでいる他の集団といっしょに遊ぶようになった場合です。どちらの集団も、自分たちのルールのほうが正しくて、それが最もいいルールだと信じています。そのため、異なるルールで遊んできた集団同士がいっしょに遊ぶことにとなったときには互いに譲れません。しかし、遊べる時間が限られていることを知っている子供たちは、ちょうどいい落とし所を見付け出し、折り合いを付けながら共通で遊べるルールを確立していきます。
こうした遊びのルールの解釈の仕方や工夫・変更の経験は、体育の学習にも転移していきます。平成29年版の学習指導要領から、「思考力・判断力・表現力等」のなかで運動の行い方を工夫するだけでなく、考えたことを「他者に伝える」学習が加わりました。「学びに向かう力、人間性等」においても、互いに考えを認め合ったりルールを守って助け合ったりして運動する学習をしていきます。
始めからルールがガチガチに決められていた運動を指導者が提示してしまったのでは、子供たちがルールに工夫を加える余地がありません。決められたルールに従って運動する態度を身に付けることも大事ですが、それだけではなく、誰もが楽しめるルールを考え出すことも学習課題の一つとなるように単元計画を仕掛けることで、楽しく運動する学習を積み重ねながら主体的に学べる環境を創っていきます。