子供にとって「できる」とは?

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子供の発達的特性を考えるとその認知的な特徴の一つとして自己中心性が挙げられます。「自分が、『いい』って言ってんだから、誰が何と言おうとも『いい』んだよ。」という見方です。幼児期から1・2年生に見られる行動様式ですが、特に学校の先生から見ると集団生活の秩序を乱す可能性が垣間見えるので、「自分勝手にわがまま言ってる。」という見方になります。

しかし、自己中心性は、それが外部に見える形で顕著に表れてくるかどうかの違いこそあれ、誰にでもある自己概念の見方なのです。自分の都合のいいようにルールを変えたり、「今の、なし!」とノーカウントにしようとしたりすることは、学校生活でもよく見られる現象と言えます。

この時期に、どのような運動経験をするかが他者から見た自己イメージである自己概念の形成に影響してくることを考えると、運動遊びの指導観が重要なポイントになることが分かります。1・2年生の時期くらいまでの子供は、自分がどれほど有能なのかを、自分の体がどのくらい思いどおりに動かせたかどうか、動きが「できる」か「できない」かで感じ取っています。

実際には、子供は「できない」とは思っておらず、「もうちょっとで、できそうだ。」と考えて、次の動きに挑んでいきますが、これを繰り返しながら、もうちょっとでできそうだった運動が思いどおりに「できる」ようになったという経験によって自分自身を肯定的なイメージで捉えることができます。「あっ! こうやったらこんなふうにできるのか~。」などと肯定的な自己概念が形成され、自己有能感を得ることができるというわけです。その結果、その後の自分の行動に自信をもって臨むこともできるようになります。

この時期を経て、次第に他者の視点からものを見ることができるのが、3・4年生あたりからと言えるでしょう。自己中心性から次第に脱していく時期になります。そのため、そこに至るまでの1・2年生の時期には、否定的な自己概念が形成されないよう、「運動遊びは、大人のスポーツを簡易化した運動ということではない」という認識のもと、「運動することが楽しいから運動しているんだ。」という子供の思いに沿った運動遊びの指導をするという自覚が指導者には求められます。運動遊びが、カイヨワが言うところの、「遊びという行動に何か目的があるわけではなく、遊びそのものが楽しいからやっている。」という考え方に基づいているからです。

ヒントは、週2回(月・金)アップロードされます。(令和4年4月1日現在)

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